2021年3月6日、名古屋入管の収容施設に収容されていたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが、何度も体調不良を訴えていたにも関わらず、危機意識に欠けた入管職員の不適切な対応や医療体制の不備により命を落としました。その痛ましい出来事が世論の後押しにもなり、 当時国会で審議されていた入管法改定案は廃案となりましたが、今年になってほぼ同じ内容の改定案を政府は再び国会に提出して審議をスタートさせています。(2023年4月15日現在)
現行での入管の収容体制でさえ、度重なる長期収容や劣悪な収容環境が非人道的だとして幾度も国連から勧告されています。一時的に収容から解かれる仮放免者は就労を禁止され健康保険に入ることも出来ず、善意の民間による支援で何とか生活せざるを得ないのが現状です。それでも過去10年で97%の人々は国外退去の処分を受けて国籍国へ帰国しています。それ以外の3%の人々はやむを得ない理由があり帰国を拒否しています。理由は①本国に帰ると差別や迫害により命の危険がある②日本で生まれ育った子供にとっては日本が故郷であり、親の国籍国の言葉がわからない③日本に家族がいる④日本に長年暮らしていて生活の本拠となっている一方、国籍国にはつながりがない等が挙げられます。
そのため彼らは難民申請をすることで日本国内に在留を希望しますが、その認定率は約0.7%。 更に現行法にはない難民申請者を強制送還しやすくする内容も改定案には盛り込まれています。 難民申請者の送還停止が定められている難民条約に日本が批准しているにも関わらずです。まずは難民認定を国際基準で正しく行うことや、在留を希望する非正規移民の事情を考慮して、在留を認める在留特別許可の採用が早急に求められています。そして最も知られていないのが、 在留資格を失効することは皆さんも良くやる交通違反と同じ行政処分であり、刑事処分には当たりません。そのため不法滞在ではなく非正規滞在という表現の方が適切と感じます。「法を犯したなら国へ帰れ」というヘイトスピーチを散見しますが、これも大きな間違いです。
何よりこの入管問題は私たちが潜在的に抱える差別感情が凝縮されたものに感じます。まずは正しい情報を知り、理解を深めていくことがとても重要です。 ビッグイシュー379号、410号、418号、427号でも取り上げています。ぜひ参考にしてみて下さい。(えびな)
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